元同僚の評価

RATING

(元)同僚として、また尊敬する先輩投資家として、毎日のように隣で投資判断や投資行動を観察させてもらっているが、私は川口を本物の逆張り投資家だと思っている。そう思う理由はたくさんあるが、その中から以下の3つに絞って紹介したい。

01. 自分を疑う姿勢を忘れない

投資で逆を張るということは、市場の誤りを指摘するようなもので、自分の後に市場はそれを認めるようになることを確信した行為である。ゆえに、一人の人間の視点で見える範囲に限界がある中でそれを貫き結果を出すのは、容易ではない。自分が誤っているのではないだろうか?と常に自分に問いかけながら、それでもこの価格は安いと思えば果敢に買っていく行為なのである。

よって、もし自分の心の中に慢心や「絶対大丈夫だ!」というような確信、自信めいたものが湧き出てくると、本来見えるはずのものまで見えなくなり、現実を見失う可能性が高くなる。それは、逆張り投資行動においては「損失」を意味しており、大変に危険な行為だ。損失を被ってから、「考えれば気付けたのに…」と後悔したのでは完全に遅く、傷が深い場合も多いのである。そのため、逆張り投資を成功させるためには、買う前にどれだけ吟味できるかが最も重要である。このところ上手くいっているからといって、決して自分を調子に乗らせてはいけないのだ。

川口と接してみると普段から「この人、自分の考えに自信ないのかな?」と思わせる言動がしばしばあるものの、投資行動においては深く吟味する姿勢が吉となる。慎重であり、少しビビりであり、価格算定においてはかなり厳しい(職業病なのか、生活面でもケチな場合がある)ゆえに、時間が経過すれば結果がついてくる。これは、運用を任せる上でのかなりの安心材料となる。タイプとしては、配当が好きな安定志向でありながら、キャピタルゲインもある程度狙いたいお客様がぴったりではないかと思う。

02. 業界構造をよく知っている

彼が投資を始めたきっかけは、前職での勉強のためと聞いている。機械関連の専門商社に在籍していたおかげで、製造業のいろいろな分野の方と接点を持ち、かつ現場を見る機会も多々あったようだ。それが、投資行動に活きてくる。ちょっと考えてみて欲しいが、上場企業の時価総額5割以上は製造業で構成されているのだから、製造業をよく知っていることは当然ながら強みとなる。もし新卒から金融業界に在籍していた場合、製造業の現場の構造を知ることはかなり難しいだろうと想像する。経営者や役員クラスの方々との接点を持てたとしても、手足となるのは現場の人間なのだ。川口が製造業の現場において、何が起因してどういうことが起きうるのかをたやすく想像できるのは、言うまでもない。それは、単に何が起こるかだけでは
なく、どのくらいの時間を要するのか、どこを見れば供給不足が解消したと考えられるのかを分野ごとに知っていることを意味する。金融業界出身者より精緻なのは、至極当然である。

03. 経験からの勘が働く

川口の投資経験は15年弱となる。その間、確かに相場は長く上昇してきた。それゆえに成功率が高いのは当たり前と考えることもできなくはないだろう。もちろん、全体相場の環境が個別株にも影響するのは否定しないが、それでもやはり、個別の要因で動くことも多い。指数とどのくらい連動しているのかを示す数値が存在していることを考えれば、納得していただけるだろうと思う。相場に追従することもあれば、しないこともある。常にその時の流行や場面場面で変わってくる。それが事実だと私は認識している。

その中で、彼の場合は結果的に損失となることが明らかに少ない。これは、ポートフォリオ全体がプラスであるという意味ではなく、含み損を放置しているという訳でも決してなく、銘柄の見極めが素晴らしいということを言いたいのである。直近の2022年の下落相場においてさえ、彼の目利き力が功を奏し、安定的にリターンを生み出している。売買を決定づける最終的な総合判断をする際には、経験値からくる言葉では説明しにくい“勘”のようなものを働かせることがあるが、川口の場合今のところこれが見事にハマる。同僚として外から見ていても、それを自然にやっていることが伝わってくる。彼自身、ここは質問されても説明しにくいと言う。これからどんな相場がくるか、かつてない事象が起きうる可能性の高い相場において、彼の投資助言は武器になるだろうと感じている。

筆者の私自身が本格的に投資に向き合おうとしたのは2017年あたりからであり、正直私の経験値は少ないと思うが、川口から紹介されたバリュー投資に関連したおすすめ本を数冊読み込んだ上で彼を観察していると、グレアム、バフェット、マンガーを師匠とした磨き上げられた投資の腕を感じ取れる。自由度が制限されるため単純比較はできないものの、投資信託のファンドマネージャーよりも結果を出す力はあると私は考えている。投資信託の場合、運用方針に沿わない方法が取れないのに対して、彼は自由がきく。もし仮に彼の運用指図で投資するファンドがあれば、私はそれを長期で買いたいくらいだ。かくいう私も、彼の推奨銘柄と売買価格を参考にさせてもらっている。